十五の妄影(もうえい)

またかという顔。

うんざりだという顔。

母さんはいつもそうだった。

母さんは僕がいじめられている事を知っている。

知っていながら、真剣にとりあわない。

相談にも乗らない。

本気で僕が悩んでいる事を話すと、むしろ怒り出す。

『いじめられるのは貴方が弱気だから。男ならイジメくらいはねのけなさい』。

それが母さんの常套句。

もっともらしく聞こえるけど、僕にはわかる。

母さんは…面倒なんだ。

仕事人間で、自分が一番大事な母さん。

僕がいじめを受けている事で大きな問題になり、自分が迷惑をこうむるのが嫌なんだ。

母さんはいつだって、我が身が一番可愛いもんね…。