十五の妄影(もうえい)

僕の家は学校から自転車で二十分ほどの所にある。

別に何不自由なく育ててもらっている、一般的な家庭。

少し違うといえば母子家庭という事だろうか。

父さんは色んな面でだらしがない人だったらしく、仕事人間で几帳面な母さんには耐えられない相手だったそうだ。

それで僕が十歳の時に離婚。

僕は母さんに引き取られた。

別にその事に不満はない。

あるとすれば…。

「晋作!」

玄関を上がって廊下を歩いていると、仕事から帰ってきていた母さんに怒鳴られる。

「貴方何でソックスがこんなに泥だらけなの!廊下が汚れてるじゃない!」

「それは…」

僕は声のトーンを下げる。

「僕の靴に…校庭の土が入れられてて…」

それを聞くなり、母さんの表情が変わる。