「桜子、ちゃん?」
俯いた私の顔を覗き込むようにして多恵ちゃんがそう言った。
「……えっ?あ、ん?」
私も多恵ちゃんの顔を見る。
「桜子ちゃん、大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」
私はニッコリ微笑んだ。
でもどうして?
どうして、一海さんに許婚がいるって聞いただけで、こんなに動揺してる自分がいるの?
どうして、胸がドキドキするの?
まさか………。
いや……ありえない……。
私は、一海さんの事なんか……。
なのに、この変な気持ちは何なの?
モヤモヤして、まるで心に霧がかかったような。
今まで味わったことがないような変な気持ち。
わかんない……。
どうして、こんな気持ちになるのかわからない……。