私と多恵ちゃんは小さな花屋に入った。
私が知ってるオシャレな花屋とは違う。
木造の古い建物。
お花を受け取って、花屋を出た。
色とりどりの花。
甘い花の香りが鼻を掠める。
「綺麗だね~」
私は花を見ながらそう言った。
「春は花が沢山ある季節だから好き」
そう言ったのは多恵ちゃん。
「でもさぁ……。多恵ちゃんって若いのに頑張るよね~」
「そう?」
「うん。他の女中さんや使用人さんたちもだけど。いつもあんな感じなの?」
「皆、働かせてもらってるって感じが強いのかな?それに……」
多恵ちゃんが花を時々見ながらそう言って、そこで言葉を切った。
「それに?」
なに?
「今日は特別な日だから……。だから皆、朝から忙しくしてるのもあるの」
特別な日?
何だろう?
誰かの誕生日とか?