桜の木の下で…―運命に導かれて―





「多恵、ちゃん?」



私はもう1度、多恵ちゃんの名前を呼んだ。



「ゴメン、ね……」



多恵ちゃんは手で涙を拭いながらそう言った。



「ううん。私こそゴメン……」



多恵ちゃんは首を左右に振る。



「ねぇ、多恵ちゃん?一里さんとの間で何かあった?」


「………」


「あっ、ゴメンね。言いたくなかったら言わなくていいからね」



私は多恵ちゃんの背中を擦りながらそう言った。


多恵ちゃんは再び首を左右に振る。



「私は、本当なら一里様を好きになってはいけないの……」



えっ?


多恵ちゃんの話を聞いて、一里さんも多恵ちゃんのこと好きだと思ったから……。


だから……。


でも、どうして?