桜の木の下で…―運命に導かれて―





「一里さんって、どんな人なの?」



私は桜を見ながら多恵ちゃんに聞いた。



「凄くお優しい方で、お兄様である一海様と性格が正反対な感じかな?」


「へぇ、そうなんだぁ……」



同じ親から生まれた兄弟でも性格が正反対とはね。



「去年の夏に、帰省された時、私がお庭の草むしりしてたら一里様が“暇だから”って手伝って下さったの。あと、本を貸して下さったり、買い物にもついて来て下さって重いものを持って下さったりするの」



多恵ちゃんが恥ずかしそうにそう言った。



「あっ!ゴメンなさい!私、ベラベラと……」



慌てる多恵ちゃん。



「友達の恋愛話聞くの好きだから大丈夫だよ!一里さんとうまくいけばいいね」



話を聞いてると、一里さんも多恵ちゃんの事が好きなんだろうなと思う。


多恵ちゃんの恋が実るといいな。


……って、ん?


多恵、ちゃん?


さっきと違って、俯いて悲しそうな顔してる。


何でだろう……。



「多恵、ちゃん?」



私は多恵ちゃんの顔を覗き込んだ。


多恵ちゃんの大きな瞳から涙が溢れてるのが見えた。