「ねぇ?」
「はい?」
家の中を案内してくれてた彼女が立ち止まる。
そこはちょうど2階に続く階段下。
彼女は階段を上がろうとしてた足を止めて振り向いた。
「あなた、名前は?」
一海さんが“タエ”と呼んでたけど……。
「私、ですか?朝山多恵(アサヤマ タエ)です」
「多恵ちゃんって呼んでいい?」
「はい!」
さっきまで笑顔のなかった多恵ちゃんの顔が、嬉しそうな笑顔になって大きな声で返事をした。
「私は一条桜子。私のことも名前で呼んでね。それから敬語はなし。ねっ?」
「うん。ありがとう」
多恵ちゃんが再び笑顔を見せる。
「私、友達いないし……。女中の中でも1番下だから。桜子ちゃんと仲良くなれて嬉しい」
「私も多恵ちゃんみたいな可愛い子と友達になれて嬉しいよ」
私と多恵ちゃんは笑い合った。
後で聞いたら多恵ちゃんも16歳だってことがわかった。