桜の木の下で…―運命に導かれて―




部屋を出た途端、私は腰が抜けたようにその場に座り込んでしまった。



「だ、大丈夫?」


「あ、うん。大丈夫」



私は彼女に苦笑いを見せる。


でも何なの?あの人……。


あんなの嫁の来てがないっつーの!


あぁ、悔しい!



「あ、あのぉ……」



彼女が恐る恐る私の顔を覗き込んできた。



「へっ?」



私は再び彼女の顔を見る。



「さっきは、どうもありがとう」


「いやいや」



私は立ち上がる。



「私は当たり前のことを言っただけ。だから気にしないで?」



私が微笑むと、彼女も微笑んだ。



「でもさぁ……あの男は一体何なの?偉いんだか何だか知らないけどさぁ……」



私がブツブツ文句を言ってると、彼女が笑いだした。



「ん?何かおかしなこと言った?」


「ゴメンなさい……。旦那様も言ってたように、一海様に食って掛かったのってあなたが初めてだから……」


「そうなの?」



皆、よく我慢出来てるよね。



「てかさぁ、あいつって何なワケ?」


「知らないの?」


「うん。知らない」



私の言葉に彼女は目を丸くして驚いていた。


知るわけないじゃん。


私は彼女から西園寺家のことを教えてもらった。