「父上!自分は……」
一海さんが大きな声を出した。
そして何か言おうとして、私をチラッと見ると言うのを止めてしまった。
じょ、冗談じゃない!
何を言い出すの?
いきなり嫁だなんて……。
まだ会って数時間しか経ってないってのに。
冗談にもほどがある。
「タエ」
一海さんが、彼女の方を向いた。
「は、はい!」
また肩をビクンと揺らし、怯えたように返事をする彼女。
「今日からこいつの教育係りを頼む」
「はい!」
彼女は返事をすると頭を下げた。
一海さんは彼女から私に目線を移す。
「おい、もう下がっていいぞ。あとはタエに教えてもらえ」
そう冷たく言い放った。
「ふん!」
何よ偉そうに!
私は一海さんに顔を背けたまま立ち上がった。



