「一海、よさないか」 一海さんのお父さんがそう言うと“チッ”と舌打ちして手を離した。 「桜子さん、ワシはアンタが気に入った。一海にあんな口の聞き方をしたのはアンタが初めてだ」 また豪快な笑いをする一海さんのお父さん。 「桜子さんみたいな人が、一海の嫁になってくれたら……」 障子の外に広がる庭を見ながら呟くように言った。 その顔は、さっきの笑顔と違って、どことなく寂しそうで……。 …………って、えっ?今、何て? よ、嫁!? いきなり、ですか……。