「失礼します」
さっき玄関にいたお手伝いさんの1人が入って来た。
私と同じくらいの年かな?
目がクリッとしてて、長い黒髪をお下げにしてる。
彼女が机の上にお茶を置いていく。
「タエ!」
一海さんが、お手伝いさんの名前を呼ぶ。
そんな大きな声で呼ばなくても……。
「は、はい!」
タエと呼ばれた彼女は、肩をビクンと揺らし、大きな目を更に大きくして返事をした。
体が小刻みに震えてる。
ビビってるじゃん。
可哀想に……。
一海さんのことがよっぽど怖いのだろうか……。
「この女に茶など出さんでいい。今すぐ下げろ!」
「も、申し訳ございません!」
彼女は土下座をする勢いでそう言って頭を下げると、慌てるように私の前に出されたお茶をお盆に乗せた。



