「父上は?」
無視かっ!
「はい、帰られております。奥の和室の方にいらっしゃいます」
一海さんが靴を脱いで上がる。
「何してる。お前も上がれ」
一海さんは私を見て冷たく言い放った。
はいはい。
上がればいいんでしょ!上がれば!
私はローファーを脱いで上がった。
「ついて来い」
「はいはい」
「“はい”は1回でいい」
何よ!偉そうに!
私は一海さんの後ろをついて歩く。
長くて広い廊下。
突き当たりを右に曲がった奥の部屋の襖を開ける。
襖を開けた一海さんがアゴを動かし、無言で入れと合図した。
一海さんの指示通りに私は部屋の中に入った。
続いて一海さんも部屋に入る。



