「そんなこと、言わない……で?一海さんには、お父さん……一里さん……一穂さん……。それに……美乃さんが、いるんだ……よ?」 私は一海さんの腕を掴んだ。 「俺は、死ぬ事は怖くない……」 そんな人なんかいないよ。 死ぬ事が怖くない人なんて。 「桜子……何が悲しい……なぜ泣く……お願いだから、泣かないで……」 しゃくり上げ泣く私に、一海さんは優しい笑顔を見せてくれた。 今まで見たことがないような優しい笑顔。 一海さんは私の頬を流れる涙を指で優しく拭ってくれた。