一海さんがこちらに気付くと、本をパタンと閉じて脇に抱えた。 桜に負けないくらい美しい一海さん。 「一海、さん……」 私は一海さんの前に立つ。 会いたかった愛しい人が目の前にいる。 「桜が咲いたな……」 一海さんは桜の木を見上げながらそう言う。 「……うん」 私も桜の木を見上げる。 「来年も……再来年も……同じ美しさで咲くといいな……」 「うん……」 「俺は来年もこの桜が見れるかな……」 えっ? 確か前もそんなこと言ってたよね? ーー来年は……見れるかな……。 って……。