夕陽ヶ丘に続く階段を上る。 上がると、桜の木が見えた。 ここに来た時には、まだ蕾だった桜。 今は満開に咲いている。 薄いピンク色の桜。 風が吹くとサラサラ音をたてて舞い散る。 ピンク色の雨みたい。 ふと桜の木の下を見ると、一海さんがいるのが見えた。 あの時と同じように、木にもたれ掛かって本を読んでいる。 胸がドクンと高鳴り、それがドキドキに変わっていく。 私は1歩1歩ゆっくりと、一海さんに近付いていく。 一海さんに近付くたびに胸のドキドキが激しくなって、涙も次から次へあふれてくる。