「そうだ!多恵ちゃんにこれあげる」
私は鞄から香水のビンを出した。
「えっ?いいよ……それは桜子ちゃんの物だし……」
「いいから。ねっ?」
私は多恵ちゃんの手に香水のビンを握らせた。
「ありがとう」
「ううん」
多恵ちゃんは香水のビンをギュッと胸の前で握りしめた。
「じゃー、行くね」
「うん……。元気でね」
多恵ちゃんは笑顔で言ってくれた。
「多恵ちゃんも元気でね」
私は多恵ちゃんに手を差し出した。
私の手を握る多恵ちゃん。
お互い笑顔を見せ合い、手を離す。
そして私は多恵ちゃんに背中を向けて歩き出した。
涙がこぼれないように上を向く。
多恵ちゃん、ありがとう。