「よく似合ってる」
私の着物姿を見た一海さんが、いつもの無表情のままそう言った。
一海さんにそう言われて凄く嬉しかった。
「ありがとう……」
でも私は、俯いて一海さんの顔を見ないようにお礼を言った。
だって、一海さんの顔を見たら泣いちゃうから……。
胸がチクチク痛むから……。
だから一海さんの顔が見れない……。
俯いてる私の手をギュッと握る一海さん。
あまりの突然のことに、肩がビクンと揺れる。
思わず顔を上げて、一海さんの顔を見てしまった。
身体中に伝わる一海さんの手の温もり。
一海さんは何も言わずに、私の手を握ったまま引っ張るように歩き出した。



