姿見の前に私と多恵ちゃんが立つ。 一海さんは何で私に着物を着るように言ったんだろう……。 着物を着せてくれてる多恵ちゃんは泣いてた。 「桜子、ちゃん、出て行くって、本当?」 「……うん」 「嫌だ……」 「仕方ないよ……。一海さんのお父さんの命令だから……」 「だって桜子ちゃんは、何も悪いこと、してないのに……」 鼻の奥がツーンと痛くなって涙があふれ出す。 多恵ちゃん、泣かないで? 多恵ちゃんが泣いちゃったら私まで泣けてきちゃうよ。