私たちが入った部屋は私が使ってた部屋。
一海さんのお母さんが使っていた部屋。
一海さんは桐のタンスを開け、その下の引き出しを開けた。
たとう紙に包まれた着物を出してくる。
それをベッドの上に置いた。
「これは亡くなった母が気に入ってよく着ていたものだ」
そう言いながらゆっくりと、たとう紙を開けていく。
中から薄いピンク色の着物が出てきた。
綺麗……。
「多恵?」
「はい!」
「桜子にこれを着せてやってくれ」
「あ、はい」
えっ?
だってこれは、お母さんの大切な着物だよ?
私が着ていいの?
「これ着たら玄関から外に出てこい。いいな。これは命令だ」
一海さんはそう言うと、部屋を出て行った。



