そんなに離れてない距離に一海さんがいる。
一点を見つめて何か考えてる姿は“ドキッ”とするほど美しかった。
あれ?
一海さんの肩が震えてる。
3月の終わり。
夜だけど外は寒くない。
吹き抜ける風も気持ちいいくらいなのに……。
どうして肩が震えてるの?
一海さんは唇を噛み締めていた。
…………えっ?
私は手で自分の口を押さえた。
だって、一海さんの目に光るものが見えたから……。
一海さん、泣いてるの?
一海さんの頬を伝う涙。
どうして泣くの?
一海さんの目から涙を見たのは初めてだった。
この涙が何を意味するのか……。
私にはわからなかった……。



