桜の木の下で…―運命に導かれて―





「伊織さんだって……一途に人を想う心を持ってる……」



伊織さんは異母兄妹である美乃さんに想いを寄せている。



「でも俺は汚れてるよ……」


「どうして?」


「妹を好きになってしまったから……。だから俺の心は汚れてるよ……」



伊織さんは前を真っ直ぐ見たまま呟くように言った。



「そろそろ戻るよ。キミは?」



立ち上がった伊織さんは私を見下ろして言った。



「私はもう少しここにいます」


「そう」



伊織さんはそう言って、夕陽ヶ丘の出入口にある階段に向かって歩き出した。


伊織さんの背中が寂しそうに見えた。