「伊織さんこそ、ここにいて大丈夫なんですか?」 目を閉じている伊織さんにそう言った。 私の問いかけにゆっくり目を開ける伊織さん。 「うん」 私の方を見て微笑む。 「そうですか……」 私はそう言って前を向いた。 沈黙が続く。 私たちの間を暖かい春風がすり抜けていく。 私は雲ひとつない青空を見上げていた。