泣きそうになるのをグッと堪えた。
泣いたらダメ……泣いたら……。
そう自分に言い聞かせる。
「桜子ちゃん?」
「あ、多恵ちゃん……」
お盆にお酒を乗せて和室の前に多恵ちゃんが来た。
「後は私がやるから桜子ちゃんはお散歩にでも行っておいで?」
「えっ?でも……」
「大丈夫。小泉さんには私から上手く言っとくから」
多恵ちゃんはそう言って、私に笑顔を見せてくれた。
「う、うん……」
多恵ちゃんは私の気持ちを知ってる。
だからそう言ってくれたんだ。
「多恵ちゃん、ありがとう」
「いえいえ」
多恵ちゃんはニコッと笑った。
そして多恵ちゃんに空になったお盆を渡して、私は裏口に行き外に出た。