桜の木の下で…―運命に導かれて―




私と多恵ちゃんは、表に回り門のところに立っていた。


他の女中さんも何人か立っている。


それは美乃さんのお出迎えのため。


それから見学に来た近所の人たちもいる。


あぁ、目が痛い。


泣きすぎて目がジンジンする。


しばらく待ってると、門の前に黒い車が1台止まった。


車の中から着物を着た年配の女性が出て来る。


その次に出て来たのは美乃さんだ。


年配の女性に手を貸してもらう形で出てきた。


この年配の女性は介添えの人だ。


車から出てきた美乃さんは、黒地に桜の模様の振袖。
頭は角隠し。


溜め息が出るほど綺麗。


周りの女中さんたちからも「綺麗」という声が聞こえる。


見学に来た近所の人たちからも「綺麗」という声が聞こえ、みんな笑顔だった。



「桜子さん、だったかしら?」



美乃さんが私に声かけてきた。



「……はい」


「目が真っ赤よ。どうされたの?」


「目にゴミが入っちゃって……」



私は目を逸らしてそう言った。



「そう……」



美乃さんはそう言うと、介添人の女性に手を引かれて門の中に入って行った。


本当はわかってるんじゃないの?


目にゴミが入ったんじゃなくて、泣いていて目が腫れてることを。


わかっててワザと聞いてきたんだろうな……。