でも、どうして朝日町がないの?


私、家に帰れないの?


どうして……どうして……。


悲しくなって涙が溢れてきた。


どんどん溢れる涙。


目の中に収まりきれなくなった涙は頬を伝っていく。



「泣くな……」



彼はそういって、長くて綺麗な指を私の頬に添えた。


“ビクッ”と体が反応する。


私は彼の顔を見た。


彼も私の顔を見てる。


でも、やっぱり表情は変わらない。


笑いもしない怒りもしない彼。


ただ、無表情のまま。


私の頬から指を離すと、本を脇に抱えた彼。



「ついて来い」



そう言って、彼は歩き出した。


私は彼の後ろを泣きながらついて歩いた。