「私も……一里様のことが、好き、です……でも……」
「でも?」
「私は、一里様とは……結婚、できません……」
私は一里様から目を逸らしてそう言った。
「どうして!」
「だって身分が……。一里様は西園寺家のご次男、私は女中。あまりにも身分が違いすぎます……。だから……」
「関係ない!」
私の言葉を遮り、一里様が叫んだ。
「そんな身分なんて関係ない!僕は!多恵ちゃんじゃなきゃダメなんだ!兄さんのように家のために好きでもない女と結婚するのは嫌だ!」
一里様の言葉に、私はその場にペタンと座り込み手で顔を覆って泣いた。
「多恵ちゃん……」
一里様が私の体を優しく抱きしめる。
“ビクッ”と体が反応する。
「泣かないで?僕が多恵ちゃんを守るから……。幸せにするから……。ねぇ、多恵ちゃん?顔を上げて?」
私は顔を上げて一里様の顔を見た。



