夕陽ヶ丘に上がると、月明かりに照らされた桜の木が見えた。
その下に、白い軍服を着た一里様の姿が見える。
いた……。
私の胸が高鳴る。
ドキドキする。
「多恵ちゃん!」
一里様の声が私の耳に届いた。
私は一里様の前に行き、上がる息を必死で抑えた。
「遅くなって、申し訳……ありません……」
「来てくれないかと思った」
一里様はそう言ってクスッと笑った。
「申し訳、ありません……」
私は頭を下げた。
「でも来てくれた。ありがとう」
一里様はそう言って、私の頭を撫でた。
肩がビクンと揺れ、胸がドキドキする。
顔を上げると、笑顔の一里様がいて……。
私は恥ずかしくて、下を向いた。



