「わからない……。わからないけど怖いの……」
多恵ちゃんは泣きながら言った。
多恵ちゃん……。
「もしかして、一里さんに何か言われるのが怖いの?」
多恵ちゃんは何も答えず俯いたまま泣いていた。
「多恵ちゃん?大丈夫だから……。だから行っておいで?一里さん待ってるよ……ねっ?」
私は笑顔で言った。
「桜子、ちゃん……」
目を真っ赤に腫らした多恵ちゃんが私を見る。
「多恵ちゃん、早く!」
私は多恵ちゃんの背中を擦った。
「桜子ちゃん……」
「ん?」
「私、行って来る……」
「うん!」
私は笑顔で返事をした。
多恵ちゃんは立ち上がり、手の甲で涙を拭うと、部屋を出て行った。
多恵ちゃん大丈夫だよ。
一里さんは多恵ちゃんに伝えたいことがあるんだよ。
それはきっと一里さんの多恵ちゃんに対する気持ち。
一里さんの気持ちは、多恵ちゃんと同じだから。
だから大丈夫だよ。



