「あのね……。一里さんから伝言を頼まれたんだ」
「一里様から?」
「うん」
「伝言って何?」
あぁ、何か緊張してきた。
私が緊張してどうする。
しっかりするんだ!桜子!
「8時に夕陽ヶ丘に来て欲しいって」
「えっ?」
多恵ちゃんは目を見開き私を見た。
「早く行ってあげて?」
私がそう言った後、多恵ちゃんから返ってきた返事は意外なものだった。
「私は……行かない……」
多恵ちゃんが俯き、首を左右に振った。
「えっ……」
多恵ちゃん、何で?
大好きな一里さんから呼び出されたんだよ?
なのに何で行かないなんて言うの?



