「桜子ちゃん、だよね?」
「はい。そうですけど……。どうして私の名前を?」
「兄さんから聞いた。桜子ちゃんって、兄さん専用の女中なんでしょ?」
「あ、はい……」
まぁ、一応、そういうことにはなってますがね。
「でも、兄さんの女中なんてよくやってられるね。兄さんって、キツイでしょ?」
ええ、ええ。
そりゃあ、キツイですよ。
キツ過ぎて笑えてくるぐらいね。
「嫌なら断ればいいのに」
「断りたいのはやまやまなんですけどね」
私はそう言ってクスクス笑った。
「桜子ちゃんって面白い子だね」
それにしても一里さんって爽やかだな。
一海さんが陰なら一里さんは陽。
多恵ちゃんが好きになるのもわかるような気がする。
「桜子ちゃん?」
「はい」
「僕のお願い聞いてくれない?」
「お願い、ですか?」
「うん」
「何でしょう?」
お願いって何?
「多恵ちゃんに伝言をお願いしたいんだけど、いい?」
「伝言?」
多恵ちゃんに伝言……。
まさか……。



