「ねぇ、一海さん?」
「何だ」
「叶うことのない恋をしてる人の気持ちわかる?」
窓の外を眺めている一海さんに問いかけた。
「よく聞こえなかったが?」
一海さんがこっちを見る。
「ううん。何でもない……」
「変なヤツだな」
一海さんがクスッと笑う。
ねぇ、一海さん?
一海さんは、美乃さんのこと好き?
美乃さんのこと愛してる?
許婚だから仕方なく結婚するの?
私は嫌だよ……そんなの……。
一海さんのことは、叶わない恋だとわかってる。
一海さんは美乃さんと結婚する。
それに私は、この時代の人間じゃないから……。
だけど私は一海さんが好き。
だから一海さんが美乃さんと結婚するのが辛いよ……苦しいよ……。
私の頬に一筋の涙が伝う。
それを見られないように、窓の方を向いて夜空に輝く月を見ていた。