桜の木の下で…―運命に導かれて―





「もう年かな?昔ほど飲めなくなった」



伊織さんがクスッと笑う。



「そんなことないですよ。若いです」



なんて、わけのわからないことを言って少し後悔した。


伊織さんが大きな声で笑う。



「キミって不思議な子だな」


「そうですか?」


「あぁ。25歳って言ったら、結婚して子供がいて当たり前なのに俺はいまだに独身だ。周りは年なんだから早く結婚しろと煩いくらいだよ。そんな俺を若いなんて言ったのはキミが初めてだよ」


「そうなんですか?」



この時代なら25歳だったら結婚してて当たり前なんだ……。


私がいた2016年なんて25歳って言ったら若い部類に入るのにな。



「もう部屋に戻るよ。悪いけど、部屋まで肩を貸してもらえる?」


「あっ、はい」



私は何も考えずにそう返事した。


伊織さんが立ち上がる。


私は伊織さんの腕を自分の肩に回した。


うげっ……。


やっぱり重い。


それに身長差もあるから歩き辛い。


でも私は伊織さんの体を必死に支えながら歩いた。