「じゃー、そろそろ中に入ろうかな。ありがとう」
伊織さんが言った。
「いえ……」
伊織さんが部屋の中に入ろうと、1歩踏み出した時……。
伊織さんの体が私の方に倒れてきた。
「ちょっ、伊織さん?」
伊織さんの体を抱きしめるような格好になってる私。
細身でも男性だから重い……。
このままだったら共倒れになっちゃう。
「ゴメン……。まだ酒が抜けてないみたいだな……」
伊織さんがフッと笑いながらそう言った。
どんだけ飲んだんだよ。
私は伊織さんの体を少し離して、抱える格好のままバルコニーにあった椅子に座らせた。
「すまない……」
椅子に座った伊織さんはそう言って、顔を上に上げたまま目を瞑っていた。



