『…離して下さい』


掴まれた腕を引き抵抗するも相手は歪んだ笑みを浮かべるばかり。


『猫は俺らの言う事を聞かなくちゃ』


『意味が分かりません』


『あれ? 聞いて無い? 隆幸はよく気紛れで女の子を猫扱いするんだよ。そのネクタイは奴の所有物の証』


リーダー格の男が唾を飛ばしながら得意気に言った。

『でも直ぐ飽きちゃうんだよね。だから俺達が慰めてやろうって話』


ぐらり、


視界が揺れる。


まさか…隆幸が、父さんが…そんな事、する訳、無い。


『嘘…』


『だから…ね? 』


嘘だよ。


真面目で、口五月蝿いけど…母さんの事を誰よりも愛してた父さんがそんな事。