私の彼はお父さん!?

『も、いい…ごめ…さよなら…』


言ったとたん、


ふわり。


暖かい体温。


微かな甘い香り。


頬を掠める金の髪。


『…あ…』


抱き締められてると気づくまで数秒。


『…なんかお前が泣いてんの見るとたまんねぇ…俺まで悲しくなる』


『たかゆき? 』


『不思議だな』


あったかい、何か安心する。


『悪かった。帰ったら別れるにしてもあいつに電話して謝る…な? だから泣くな』


『う、ん』


『涙拭け』


『ん』


『鼻もかめ』


『…うん』


『よしよし、』


柔らかく笑うその笑顔につい見とれてしまった。


『さ、じゃ飯行こうぜ』


『うん』


自然に手を繋いであたし達は歩き出す。


お兄ちゃんが居たらこんな感じなのかも。


ぼんやりそんな事を考えていた。