向こう岸の恋

「ミカ!」
「ミカー」

 ホテルのロビーで、友達が口々にミカの名を呼ぶ。

「帰ってこないから心配したんだよ~」

「もう少しで捜索願い出すとこだったんだから」

「ごめんね。連絡出来なくて」

 帰る途中でちょっと道に迷っちゃって。

ミカはちょりと舌を出して、苦笑いした。

 本当は大声で泣きたい。そんな気持ちをぐっとこらえた。

 部屋に戻って、みんなが寝静まった頃。ミカは1人バルコニーに出た。

「……」


 あふれるほどの星。ミカは星空を見上げて別れ際の事を思い起こす。


キスのあと、

「忘れるんだ」

 ベリルは静かに言った。


「ベリルのばか」

 だから……あんなキスしといて、忘れられる訳無いじゃないの……