「イタイ。もうちょっと優しくしてよ」
「人質のくせに文句が多いな」

「ここから逃げられると思ってるの?」

 甘いわよ。女が吐き捨てるように言う。それにベリルは、

「逃げる? 誰がそんな事を言ったかね?」

 表情の無い目で、イリーナを見つめた。

「ど、どういう意味?」

 疑問に思っている女を連れて、ドアを開く。

「! やめてっ」

 女は彼のする事に気付いて、激しく抵抗した。そこは、今まで集めた“コレクション”を保存している冷たい部屋だった。

「どうしてここだとっ?」

「建物の構造というのは、大体似通っている。あとは、建てた者の趣味だな。それで部屋の配置が決まる」

 言いながら、冷たくなった人間を見つめた。