向こう岸の恋

「きゃあぁ!?」

 トラを倒した時と同じ音が、今度はベリルの胸に当る。ミカは恐怖で手で顔を覆った。

「……うっ」

 しかしベリルは、口から血を流してもそこに立っていた。

「あ……あ」

 ミカはガタガタと体を震わせる。ベリルの顔は女を睨みながら、不敵な笑みを浮かべていた。

「上出来ね」

 言うと、高い足音を残してどこかへ行ってしまった。

ベリルは溜息を吐き出し、ミカが閉じこめられている透明の容器に近づく。

「ベリル……大丈夫?」

 私のせいだ。彼には関わっちゃいけないのに……

血まみれのベリルの手が、容器に添えられる。泣いている私に、彼はにこりと笑った。

「私の事は心配ない。怖い思いをさせてすまない」