向こう岸の恋

ベリルはトラに近づき、その頭を優しくなでた。

「……」

 ミカは、その光景に見入っていた。

目の前で見た、彼の傭兵としての力。怖いけど……

トラをなでている彼の顔が、とても優しくて私は思わず顔がほころぶ。

「きゃあ!?」

 ミカは突然の音に驚いて声を上げた。

 女がいるであろう場所から、トラの頭に銃弾が浴びせられたのだ。飛び散った血が、ベリルの服を赤く染める。

「酷い」
「……」

 息をしなくなったトラをベリルは見つめて、女の横にいる男をギロリと睨み付けた。

その手にはライフル。

「今度は、もう1つの力を見せてもらいましょうか」

 女が言うと、ライフルを持った男がベリルに照準を合わせた。