向こう岸の恋

 そう言った女に、ベリルは薄笑いで視線を向ける。

「どっちの?」

 その言葉に、そこにいた全員がいぶかしげな顔をした。

 トラがベリルに突進した。

「きゃあ! ベリル」

 ベリルはトラの爪の攻撃を避ける。

そして、ベルトの背後からナイフを取り出し、再び向かってきたトラの左前足にナイフを走らせた。

「ガアアァー!」

 痛みで叫ぶトラに、今度は右太ももにナイフを突き立てる。

 トラの攻撃をかわしながらの動きは、見事な流線を描き、最後はトラの目をジッと見つめた。

 それで、トラは戦意を完全に無くした。へたり込み、喉をゴロゴロと鳴らす。