向こう岸の恋

「私が手に入ったのだから、彼女を解放しろ」

 ベリルは声を張り上げて応えた。

「あら。それだけではタメよ」

 女は軽い口調で言うと、

「ちゃんと約束してもらわなきゃ」
「約束?」

「そう。私から逃げない。という約束をね」

「……」

 ベリルの目は険しい。

「まずその前に」

 別の扉が開く。出てきたのは、大きな体を流れるようにゆっくりと動かす猛獣。

「トラ?」

 唸りを上げて入ってきたトラに、ミカは恐怖した。そのトラは、目の前にいるベリルに睨みを利かせる。

「……」

 トラはベリルに向かって、大きく吠えた。

「あなたの力が見たいわ」

 女はダンスでも楽しむように言い放った。