吉田の奴…マジで許す気ねぇし。
南を大切にするって言った奴は、どこのどいつだよ。

南と吉田は、今頃…くそっ。
…はぁ。嫉妬するじゃねぇか。

冗談じゃなかったんだ。まだ南が好きだってこと…

今は諦めることが出来ないけどよ、いつかは…諦めるしかない。

「要君、気になる?」
「まぁ…って、いつからいたんっすか?」

「さっきから」

周り見えてねぇな俺。吉田の親父が俺に話しかけてきた。
相変わらず、この人は元気だ。
それに、昔から変わらないのは、元気と外見。
カッコイイままだし、南にベタベタしてるし…

俺は、ずいぶん変わった。髪の毛の色を変えた。茶髪から赤茶色にした。
背も伸びたし、声だって昔よりちょっと低くなった。
ギターも上手くなってきた。

詞を作るのにも自然に作れるようになった。昔は、なかなか作れなかったけどな。

すごく変わったのは、あまり南にベタベタしなくなったこと。

南は、吉田のことが好き。つまり、南は俺をこれから先ずっと友達だって思うんだよな。
そんなことを思いはじめた俺は、南が結婚してからあまりベタベタしなくなった。

ベタベタしてても、悲しいだけ。

「南のことで悩んでるのかな?」

「…」

「あの子は、家族っていう大切なものを知らずに育ってきたんだ」

家族を知らない?どういうことだよ…
そういえば、あいつから親の話聞いたことねぇな。