「泰明様、いかがなさいましたか?」

「何がだ?」

「…いえ。壁に向かって
ブツブツと話をされているので、
未知の世界と交信なさっていらっしゃるかと…。」

「………。で?」

「はい。お車のご用意が
出来ました。」

今日は、統括してるグループ会社を視察する予定だ。

腕時計に目をやる。
11時30分を過ぎた所。

「いくぞ。」

椅子に掛けられた上着に
手を伸ばす。

門の前に停められた
黒塗りの高級車に乗り込む。

静かなエンジン音と、共に車は
滑らに走り出す。