紹介状が受理されると、勇樹は自分と同じ様に徴兵されて来た者達と共に、早速戦闘訓練へと参加した。

徴兵されて来た者達の中には、まだ中学生らしき子供も混じっていた。
必死に戦闘訓練に着いて行く子供達を見て、勇樹は早く戦争が終わればいいと心の中で思っていた。

そんな事を思っていた矢先である、勇樹は零戦による特攻を命じられた。勇樹が中継基地に来てから一週間後の事である。

「待って下さい! 私には婚約している妻がいます……。もう一度、考え直して下さい」

特攻と言う言葉を聞いて、勇樹は叫びを上げる。

特攻、それは死んでくれと言われている様な物。

この任務で生きて帰る事は出来ない。

秋に必ず帰ると誓った言葉が嘘になる……。

幾つ物の感情が重なり合い、どうしようもない恐怖が勇樹の心の底から込み上げて来て、やがて、勇樹の全てを飲み込んで行った。
勇樹はただ立ち尽くすしかなかった。

星が点々と輝く夜空の下で勇樹は空を見上げ、ぼつりと呟く。

「ごめんな、秋。約束、守れないや。本当にごめ……」

最後の言葉を言い終わる前に、勇樹は目から大粒の滴を流した。

誰も居ない夜空の下で、勇樹は声を殺して泣いた。