蝉の鳴き声を聞きながら、真夏日の太陽に照らされて熱くなったアスファルトを勇樹はひたすら歩いた。
 
秋への想いに後ろ髪を引かれながらも、愛しさを心の奥底に閉じ込めて、自分の足が止まってしまう前に勇樹は一歩一歩力強く踏み出して行く。
 
例えその道にどんな困難が待ち受けて言おうとも、勇樹が歩みを止める事は無い。
 
この戦争が秋とお腹の中に居る赤ちゃんを苦しめるのならば、自分がこの戦争を終わらす矛、又は盾と成りたい。
全身からそんな気迫を放ちながら、世界中を照り付けている太陽光が生む熱カーテンの中を、勇樹はバス停を目指して進んで行った。