『なあ、夏実』 『え?』 『何だよ、聞いてなかったのかい。仁志が結婚なんて驚きだよなって』 『―ああ、そうね…』 『彼、モテるから本当に苦労したんですよ?他の女を取り払うのに』 夏実は自分の思いに愕然とした。 ―何を考えているの。 今、何を思ったの。 仁志が自分を見ていることに気付き、慌てて目を反らした。 ―下らない。 離れてしまうから、寂しくて変な幻想を抱いたのだ。 私は裕太がいて十分幸せなんだから。