北海道なんて、聞いてないよ。 『どうして言ってくれなかったの』 夏実は仁志に言った。 『急に決まったから。お前達も忙しい時期だろうし』 『ごめんなさい、夏実さん。本当は私の実家が北海道で、父が体調悪くて急に入院したんです。看病したいって言ったら仁志がじゃあ北海道に住もうって言ってくれたの』 工藤という女が仁志の手を握った。 仁志は決めたら即実行する。 それは変わらない。 けれど、変わってしまったことは沢山あった。