「だって、先生にも言われたのだけど、忘れることで今の幸せな生活が出来ているの。私は今の生活を続けたいの」 「―それで、本当に幸せだと思うか」 「どうして?凄く幸せよ。仁志は違うの?」 仁志は夏実を見た。 辛そうな顔だった。 「夏実。もしかしたら、俺にも知らない辛い過去があるのかもしれない。でも、思い出して欲しい。過去から逃げて欲しくないんだ」 「…今の生活が続かなくなっても?」 彼は頷いた。