「―釘を指すようですが、幸せな思い出なら真っ先に思い出すはずなんです。おそらく辛い思い出になるでしょう」 「―そんなはず、ない。きっともうすぐ思い出すわ」 米田は微笑み、 「そうですね、きっと思い出します。焦らずに治療していきましょう」 ―本当は、不安だった。 思い出せたことが増えてくると更に不安が増す。 どこか変だ。 何かが足りない。 でも、その何かを考えようとすると、苦しくなってしまう。