「―今日、行ってこようと思う」

「え?」

以前に仁志が調べて何度か勧めてくれていた。

「―そうか…俺も行くよ」

「いいの。仁志は仕事があるでしょ?」

「―でも…大丈夫か?」

「大丈夫よ」

彼は夏実を見つめて、

「そうか」

と言い、頭を撫でた。

大学病院にいる神経内科の医師が、脳の研究を行っていて、何人か夏実と同じく記憶を失った人の治療を行っているらしい。

仁志から話を聞いた時は、不安で怖くて行けなかった。

今は早く思い出したかった。